研究概要 |
平成17年度から18年度にかけて以下の研究を行い、成果を挙げてきた。 1.ダム問題と呼ばれる自由境界問題に対する反復スキームの収束について、その理論的枠組みを明らかにした。自由境界問題の解の存在証明では、レベルセット法と呼ばれるアプローチが理論的に優位だが、工学の現場では「試行自由境界法」などと呼ばれるより直感的なアプローチが取られえることが多い。しかし、この方法を数学的に厳密に解析することは難しく、これまでほとんど結果がなかった。この研究では、幾何学の極小曲面の手法を使うことにより、反復スキームの収束証明の枠組みを構築することに成功した(論文[1])。 2.ダム問題に対するよりよい反復スキームを設計するためには、自由境界をごくわずか変動させたときに、領域内の流れの速度ポテンシャルがどのように変わるかを定量的に把握する必要がある。このような、境界の摂動に関する変分をHadamard変分というが、最近速度ポテンシャルの第一変分を計算することに成功し、プレプリントにまとめた。 T.Suzuki, T.Tsuchiya, Weak formulation of Hadamard variation and its application to the filtration problem. 3.有界な区間上の2点境界値問題に対する区分2次の有限要素法の誤差解析を、「山本の原理」と呼ばれる手法を使って非常に精密に行うことに成功した。既存の結果が、たとえば係数関数が不連続な場合にも成り立つことを示すことができた(論文[2])。 4.行列の固有値と固有ベクトルを求める古典的Jacobi法の収束について、簡単な証明を見つけプレプリントにまとめた。 T.Tsuchiya, A note on convergence and a posteriori error estimate of the classical Jacobi method.
|