d次元空間内のd+2個の単位球面の配置で、どのd+1個の共通部分も空ではないが、d+2個すべての共通部分は空となるようなものをd次元の単位球面システムと呼ぶ。d=1の場合は単位球面システムは存在せず、d=2およびd>3のときは単位球面システムが存在する。この結果は昨年度発表した。d=3の場合だけが未決着で残っていた。今年度の研究でd=3の場合には単位球面システムは存在しないことを証明することができ、単位球面システムの問題には完全な決着がついた(徳重氏との共同研究)。d=3の場合の単位球面システムの非存在の証明には、四面体の外接球と傍接球に関する命題「四面体の外接球は、傍接球を含むことはできない」というものを用いる。この命題は昨年度、私たちが予想として述べたものである。これが実は、J.H. Graceが100年ほど前に言明した定理であるということがM.Bayer教授の教示により判明した。 Graceの定理は、シュレーフリのダブルーシックス直線配置をLieの線球変換で球面のダブルーシックス配置に変換することによって証明される。Grace自身は証明のアウトラインを述べただけなので、今年度の研究では、Graceの定理の完全な証明を与えた。線球変換に関しては、実球面の配置への応用に便利なように改良し、複素射影空間内の直線の(ダブルーシックス配置への拡張に関して閉じているような)特殊な集合から、1点コンパクト化した3次元ユークリッド空間内のすべての有向球面の集合への全単射として与えることができた。
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