研究概要 |
景気循環は経済成長によって駆動される.そこで今年度は,経済成長を確率微分方程式で記述し、その漸近挙動を調べた. 具体的には,経済指標としてper-capita capital stock k(t,w)を選び,それをMerton(1975)の方法で定式化した.するとk(t,w)は区間(0,∞)上の拡散過程となる.Feller(1954)、Ito-MacKean(1965)、Nishioka(1976)などにより既に詳しく調べられた1次元拡散過程の結果を応用し、k(t,w)の漸近挙動を知る事ができた. すなわち資本増加時の摩擦係数をr、またn、σを人口増加率とその確率変動(=分散)とし、 θ=r+n・σ^2/2 とおく. 1.生産関数fがk=0でInada条件をみたすとき、 (i)θ>0・確率1でlim_<t→∞>k(t,w)=∞、 (ii)θ≧0・k(t,w)は再帰的,つまり"どんなに時間が経過しても、経済は永遠に変動し続ける".(この結論は、経済成長方程式に確率項を導入しなければ得られない.) 2.生産関数fがk=0でInada条件をみたさないとき、sを貯蓄率とする. (i)θ>0・確率1でlim_<t→∞>k(t,w)=∞、 (ii)0≦θ≦sf'(0)・k(t,w)は再帰的、 (iii)0<θ・確率1でlim_<t→∞>k(t,w)=0、(この結論は、Inada条件を仮定した1では得られない.例えば人口増加率が大きい場合がこのケースに合致する.) さらに我々は,別の経済指標である"k(t,w)の成長率の時間平均"および"total capital stock K(t,w)"の関しても、その漸近挙動を調べ,上記と同様の結果を得た.
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