研究概要 |
景気循環は経済成長によって駆動される.そこで今年度は,昨年度および一昨年度に引き続き,経済成長を確率微分方程式で記述し、その漸近挙動を調べた. 具体的には,経済指標としてper-capita capital stock k(t,w)を選び,それをMerton(1975)の方法で定式化した.このk(w,t)は区間(0,∞)上の拡散過程となる.Feller(1954)、Ito-MacKean(1965)、Nishioka(1976)などにより既に詳しく調べられた1次元拡散過程の結果を応用し、k(t,w)の漸近挙動を知る事ができた,Nishioka(2007). 次に,実際の経済データからいつかの経済指標を算出することにより,k(t,w)の確率分布を数値解析により求めた.そして,現実に達成されたper-capita capital stockと我々の計算よるk(t,w)の漸近挙動との比較,検討を行った. すると幾っかの実例では,我々が計算したk(t,w)の漸近挙動と現実の統計データとが一致しない場合があり,"技術の進歩"を考慮したより詳細な確率微分方程式が必要となった.ところが,技術の進歩は不連続なので,独立なポアッソン過程を前述の確率微分方程式に加え,その解の漸近挙動を調べることになる.しかし,ジャンプ項を含む確率微分方程式の解の漸近挙動に関する一般論は,まだ確立されておらず,その方法を研究している.
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