研究概要 |
景気循環は経済成長によって駆動される.そこで,昨年に引き続き 1.経済成長をより一般的な確率微分方程式によって記述する 2.その解(=経済成長)の漸近挙動を幾つかの経済指標によって分類する の研究を行った.大多数の先行研究では,経済成長に影響する指標のなかで「労働人口の増減」と「技術的な進歩」のどちらか一方のみを確率摂動とし,他方は定数としている.経済成長をより一般的に記述するため,我々はその両者を確率摂動とみなし,それらを同時に含む確率経済成長方程式を構成した.通常,このような確率微分方程式は2次元となり,1次元拡散過程の研究結果が応用できず,解の漸近挙動の研究は著しく困難になる. そこで,両方の確率摂動を合成することにより,「労働人口の増減」と「技術的な進歩」を一つの確率過程で表現し,“目標とする確率微分方程式"と同値な1次元確率経済成長方程式を得た.この確率微分方程式を調べることにより,経済成長の漸近挙動を「幾つかの経済指標」で完全に分類することができた(Nishioka,2008). そして,両者を同時に確率摂動とみなすことにより,従来の一方の確率摂動とは全く異なる以下のような著しい結論が得られた: 3.(労働人口の減少も許すため)「国家の破産」でも「個人資産の増加」は可能. 4.またInada条件を仮定した場合にも(経済指標のある組み合わせの下では),確率1で経済の破綻が起こる.
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