研究概要 |
1.テキスト批判 本年度は建部賢弘の『綴術算経』(1722年)の校訂,現代語訳およびその英訳を進めた.テキストの校訂,現代語訳作業では『不休綴術』と東北大狩野文庫『綴術算経』(70桁本),『弧背截約集』(横塚本)等も参考とした.これらの研究の結果は来年度岩波書店から出版される予定である.また英訳は一応完成し,現在本文,数学的解説部分の見直しを進めている.この英訳は来年度のSCIAMVSに掲載される予定である. 2.テキストの数学的,思想史的,歴史的解明 近世日本における数学は中国伝来の数学の伝統の上に,十分な自由度を持って問題を設定し,その解法を見出したが,しかしその結果の記述においては非常に限定された形式しかもたなかった.これまで近世日本の数学書において記述に飛躍があることはよく知られていたが,その記述の形式,構造については特に考察されてこなかった.本年度の研究においては建部賢弘の『大成算経』を例として,その形式,構造について検討し,また考察の過程が十全に表現されない歴史的背景について研究を進めた.研究成果は「近世日本数学における表現形式について」として京都大学数理解析研究所研究集会で発表し,同講究録に掲載予定である. 3.国際会議における学術講演として,つぎの二件の発表を行った.(1)"Editing a Critical Version of TAKEBE Katahiro's Mathematical Works,"The Sixth ISHME(July 4--10,2005,The University of Tokyo).(2)"A Quotation from the Suishu in the Tetsujutsu Sankei by Takebe Katahiro,"東亜数学典籍学術研討会(2006年3月18日〜19日,中国・清華大学).
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