研究概要 |
1.テキスト批判 『建部賢弘数学著作集』について,現在編纂中の『関孝和集』(岩波書店)と形式を合わせる形で準備を進めている.すなわち,影印,校合,訓読,注解,現代語訳および注,解説の形態を踏襲する. 2.テキストの数学的,思想史的,歴史的解明 『綴術算経』の数学的内容については森本光生氏(国際基督教大学)との共同研究によりほぼ解明することができた.従来の概観的要約に比して精確な理解ができたことは近世日本数学史研究において大きな収穫であると信ずる.また同書の思想史的側面として,末尾に付された「自質の説」について詳細な検討を施し,京都大学数理解析研究所の研究集会で発表し,その報告論集『講究録』に投稿した(現在印刷中). 3.関孝和研究 建部賢弘の研究には師である関孝和の研究が不可欠であるが,その点については,本年はまず,関の行列式について研究し,小松彦三郎氏による「17世紀日本と18-10世紀西洋の行列式,終結式及び判別式」(京都大学数理解析研究所講究録,2004)における解釈が現在のところもっとも妥当との結論を得て,『数学のたのしみ』(2006年夏号)に発表した.また,これまで適当と思われる解釈が得られていなかったベルヌーイ数を用いた冪乗和の公式について,比較的簡明な解釈を得ることができたので,これを"The Bernoulli Numbers discovered by Seki Takakazu"として,2^<nd> IPSHMEAにおいて発表し,現在論文として準備中である.また,現在,『関孝和集』の編纂(共編)も進めている. 4.建部の時代背景を探る一環として,建部以前に『算学啓蒙』に注解を施した星野実宣の『股勾弦砂』に校注を施し,研成社から『江戸初期和算選書』の一冊として発表した.
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