研究概要 |
平成18年度は,平成17年度から引き続いた2つの研究を主に行った. 第一は,ハミルトン力学系の非退化な不動点が生硬するincomingおよびoutgoingな安定多様体について,対応する準古典シュレディンガー方程式の超局所解の特異性(超局所台)が一方から他方へ伝播するかどうか,またincomingな安定多様体上のインプットデータを与えてoutgoingな安定多様体上のアウトプットデータを計算する方法についての研究である.J.-F.Bony, T.Ramond, M.Zerzeri氏との共同研究でジェネリックな場合については5月に論文"Microlocal kernel of pseudodifferential operators at a hyperbolic fixed point"を投稿した.現在回答を待っているところである.さらにZerzeri氏を11月に3週間ほど姫路に招いて研究連絡を行った.不動点での基本行列の固有値がすべて0でない実数の場合についての上記の結果を,基本行列が複素固有値をもつ場合に拡張する問題について研究を開始した. 第二は,滑らかだが解析的ではない島の中の井戸型ポテンシャルが生成するレゾナンスの虚部の準古典漸近展開を計算する研究である.9月に共同研究者のA.Martinez氏を姫路に招聘した際,また平成19年3月にイタリアのボローニャ大学に海外研修に行った際,WKB近似解と真の共鳴状態の誤差を十分精密に評価することに成功した. この研究は平成19年度も続けて,論文にできる見込みである. なお,今年度中に投稿したC.Lasser, L.Nedelecとの共著論文"Semiclassical resonances for a two-level Schroedinger operator with a conical intersection"は,まだプレプリントである. 最後に,2月24日,25日に姫路で偏微分方程式の研究集会を開催した.散乱,スペクトル理論を中心に,非線形問題,逆問題,幾何学におよぶ広範な課題について一戦で活躍する研究者を招いて講演をお願いした.
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