研究概要 |
1.差分近似理論の立場から導入された弱安定性条件を満たす線形作用素の族が,バナッハ空間全体で稠密に定義されているとは限らない場合に発展作用素を生成することを証明した. 2.非線形抽象微分方程式の適切性の条件に着目してリプシッツ作用素半群の概念が誕生した.本研究では偏微分方程式の解を数値解析的に求めようとするときに生じる収束性の問題を位相解析的に定式化したリプシッツ作用素半群の収束定理およびリプシッツ作用素半群に対するChernoffの積公式を得ることに成功した. 3.非回帰的な空間における混合問題を考察する際,境界条件の影響により,考えている方程式から自然に定まる作用素は必ずしも稠密な定義域を持たない.このような動機のもと,非稠密な定義域を持つ作用素により支配される準線形発展方程式の可解性について,新たに提案した消散条件のもとに研究した. 4.一般化された古田不等式に対する一つのinterpolationをmeanを使って与えた.特別な場合には,古田不等式,Ando-Hiaiの不等式を含むことを示している.さらに種々の作用素平均についての差に対する上限を調べた.特に,可換と非可換の場合の違いについて考察している。 5.完全性の同値条件として、完全正定値関数の一意的な積分表示可能性(Stieltjes完全性)を考察した結果,単位元をもつ可換*半群でこの2つの概念が同値であることを示すだけでなく,単位元をもたなくともよい一般的な可換*半群ではこれらは必ずしも同値ではなく,さらに条件が必要であることを示した.以前にconelike半群上の(有界とは限らない)正定値関数は必ず積分表示できることを示したが,連続性との関わりが未解析であった.2次元の場合でさえ,連続な指標によるモーメント関数が連続にならない反例を示した.
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