研究概要 |
無限グラフ上の離散ラプラシアンのスペクトルの構造を、グラフの幾何学的な性質によって特徴付けることを目的とする研究が多くなされてきた。以下の結果は、昭和大学の樋口雄介氏との共同研究によって得られたものである。Gを無限グラフとして、有限生成群ΓがGにグラフ自己同型として作用し、その商グラフM=G/Γが有限であるという状況を考える。 定理1 有限グラフMが2-因子を持ち、GはMの極大アーベル被覆グラフ、即ちΓとMの1次の整係数ホモロジー郡H,(M,Z)とが同型であるとする。このときG上の離散ラプラシアンは絶対連続なスペクトルのみを持ち、特に固有値は存在しない。 系1 有限グラフMが奇数次正則2部グラフ又は偶数次正則であれば、Mの極大アーベル被覆グラフ上の離散ラプラシアンは絶対連続なスペクトルのみを持つ。 定理2 Gは有限グラフMの正則被覆グラフで、変換群Γはamenableであるとする。このとき、λがG上の離散ラプラシアンの固有値であれば、λに対応する固有関数で台が有限であるものが存在する。 以上の結果は次の論文にまとめた。 Yu.Higuchi and Y.Nomura, Spectral structure of Laplacian on a covering graph, preprint
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