研究概要 |
平成17年度の研究実績のひとつは,ハンケル変換に関する移植定理が実ハーディー空間において成り立つことを証明したことである.移植定理とは,二つの直交関数系に対するそれぞれのフーリエ展開を考えた時,展開係数が同じであれば,それぞれのフーリエ展開が与える2つの関数のノルムが同値であることを主張する定理である.これは直交関数展開の調和解析における有効な道具である.ハンケル変換とは,その特殊な場合としてフーリエ変換を含む有用な積分変換である.実ハーディー空間における作用素の評価は,補間によって,ルベーグ空間における対応する評価を導く.我々は,これら有用な枠組みにおいて,移植定理を得たものである.この成果は,学術雑誌Tohoku Math.J.に発表された. また,移植定理とは移植作用素の有界性を主張する定理と言える.この作用素は,ヒルベルト変換の一般化とも捕らえることが出来る.ヒルベルト変換は,ある条件を持つ関数を可積分関数に写すことが知られている.これをハンケル変換の移植作用素に対して示すことが出来た.さらに,この結果を用いてハンケル変換に関するチェザロ作用素の可積分関数の空間及び実ハーディー空間における有界性を導くことが出来た.この成果は学術雑誌Studia Math.において印刷中である. 古典的なペーリーの不等式を,円環上の実ハーディー空間について述べれば次のように言える.実ハーディー空間に属する関数のフーリエ級数展開を考える.このとき,第n番目のフーリエ係数の絶対値の2乗をアダマールの間隙をもつnに渡って総和したものは収束し,その和は元の関数の実ハーディー空間のノルムの2乗で押さえられる.我々は,この古典的なペーリーの不等式のハンケル変換に関する類似の結果を考察中で,次年度には成果が得られるものと考えている.
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