本研究の目的は、量子群および量子環に密接な関係のあるq-変形調和振動子を規定するq-変形生成作用素のq-正規作用素への拡張およびその表現を系統的に解析することである。本年度は研究実施計画に基づき、「q-正定値」なる概念を導入した。この概念への勲機は、q=1の場合における通常の生成作用素(非有界)が、所謂有界作用素の範疇におけるBram-Halmosの非有界作用素に対応する「一般化された正定値条件」を満たすことに由来する。この場合、この作用素はBargmann空間上の独立変数を掛ける積作用素に拡大されることにより、正規作用素拡大を持つことは知られている。一般には、非有界作用素に対するBram-Halmosの一般化された主定値条件を満たす作用素は、formally正規作用素という広いクラスへ拡大されることが知られている。一方、q-変形作用素に関する研究は、q-正規作用素および関連する作用素については様々な観点からその性質は解明されている。しかし、今回の研究(「q-正定値」からの拡張問題に関連して)で重要な役割を演ずる可能性のあるq-formally正規作用素については、ほとんど研究されていなかった。この作用素について詳しく解析し、以下の結果が得られた: 1.自明でないq-formally正規作用素は、必ず非有界である。 2.q-formally正規作用素のスペクトラムは、必ず0を含む。 3.q-formally正規作用素がq-quasi正規作用素ならばq-正規作用素になる。 4.q-formally正規作用素は、その定義域がその共役作用素の核ならば、その閉包はq-正規作用素である。 5.稠密な値域を持っq-formally正規作用素は、逆作用素を持ち、かつその作用素もq-formally正規である。
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