研究概要 |
1.単位円板上の有界解析関数空間における荷重合成作用素の位相構造については,泉池敬司(新潟大),細川卓也(本研究課題の研究協力者)との共同論文として,平成17年度に発刊した.引き続き,合成作用素の一次結合について,compact性,essential normの評価に取り組んだ.compact性については完全に特徴づけ,norm評価については係数が正の場合のときの成果を得たが,泉池敬司も加わっての共同研究で,係数の実部が正の場合に拡張でき,関連する問題も浮き彫りにした.この結果は論文として投稿した.作用素論の研究者にとっては,むしろ作用素の「和」に興味があることが知られているので,一次結合についての研究はC*環,作用素環への新たな展開が予想される.2.有界調和関数空間上のHankel-type作用素のcompact性,完全連続性も泉池教授との共同研究によって明らかにし,平成18年度論文として発行した.この研究はDunford-Pettis性質,tight環,Bourgain環に関係するなど重要な応用面を多く持っている.引き続き,Hardy, Bergman空間の場合についても研究を行った.その成果は本研究課題に連動する形で京都大学数理解析研究所に応募し,採用された共同研究「Analytic Function Spaces and Their Operators」(18年6月開催)で発表した.この共同研究集会は日本,韓国,中国からの研究者を招き,この分野の諸問題を論じ合う目的で開催した.その旅費の一部を本件より捻出したが,参加者より継続的な開催を望まれた.3.本研究課題の研究協力者である細川卓也と,Bloch空間上の合成作用素のcomponentをcompact性で特徴づけ,位相構造を考察した.その成果は平成18年度論文として発刊した.また,差のcompact性についての結果も,投稿し受理された.4.合成作用素と微分作用素の積について,N.Pornoyがその学位論文(1998)で紹介し,その有界性、compact性を特徴付けたが,合成作用素と微分作用素の順の積については,Hardy空間上の場合の特徴付けは残されていた.この問題を考察,平成18年度論文として発刊した.
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