研究概要 |
非線型の偏微分方程式について研究した.係数や初期値としては実解析的または複素解析的な関数を考える.方程式のタイプは非線型波動方程式を典型的な例とする2階の方程式である. この種の方程式について,特異解を組織的に構成する方法を考え出した.まず与えられた方程式を常微分方程式の摂動とみなす.基本となる非線型常微分方程式の解は求積できる. 偏微分方程式の解であって,超曲面t=f(x)に特異性を持つものを構成しよう.T=t-f(x)という変換によって超曲面はT=0という簡単な式で与えられる.偏微分方程式はTに関する常微分方程式の摂動とみなせる.その常微分方程式の解であってT=0に特異性を持つものをv(T)とする.偏微分方程式の解u(T,x)はv(T)に摂動項を加えたものとして求められる.すなわち,最も強い特異性を担うのがv(T)であり,それに穏やかな項(あるいはまったく特異性のない項)w(T,x)を加えたものがu(T,x)である.結局w(T,x)をうまく構成すればいいことになる. そこで用いるのはFuchsian Reductionと呼ばれる方法である.u(T,x)が満たす非線型波動方程式自体には特異性がないが,w(T,x)が満たす方程式は特異性をもつ.すなわち,Tに関する最高階の微分の係数がTを因数として含む.この方程式は非線型フックス型であり,Gerard-田原らの結果を用いて解を構成することができる. こうしてw(T,x)が構成され,u(T,x)も構成されることとなる.
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