研究概要 |
非線型の偏微分方程式について研究した.係数や初期値としては実解析的または複素解析的な関数を考える.もともと非線型波動方程式を典型的な例とする2階の方程式の研究から始めたが,今では一般のm階の方程式を扱えるようになっている.我々は特異解を組織的に構成する方法を考え出した.偏微分方程式の解であって,t=0での漸近展開の主要項がtのl乗とlogtの積を含むものを構成した.ここでlは方程式の非線型項から決まる指数であって,小林隆夫が定義したものである(小林はl=0,1,2,…,m-2の場合を除外した,我々はその除外された場合に興味がある.) 上述のような解が存在するであろうということは,偏微分方程式をtに関する常微分方程式の摂動とみなせば判る.つまり,プロトタイプとなる常微分方程式は求積法で解けて,それが上述のタイプの解を持つのである.それを多変数化するには,Fuchsian Reductionと呼ばれる方法を用いる.元の方程式の解をu(t,x)とするとき,uから主要項を引いた残りをtのl乗掛けるv(t,x)とすると,vがフックス型方程式を満たすのである.結局このフックス型方程式について調べれば良いことになる.田原秀敏との共同研究の成果がJournal of the Mathematical Society of Japanに掲載されることが決まった.
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