本研究によって得られた研究実績の概要は、以下の通りである。 1.C^n内の単位球上のparametric representationを持ち、原点でk+1位の零点を持つ単葉正則写像に対する増大度定理と係数評価を与え、様々な例を与えた。 2.C^n内のユークリッド単位球上の様々な正則写像の族に対して、星形写像、凸写像になる半径やBloch半径について考察した。特に、実部が正である写像の族やそれに関連した写像の族について考察した。また、係数不等式によって定義された写像の族についても考察した。更に、複素ヒルベルト空間の単位球上への一般化についても考察した。 3.C^n内の任意のノルムによる単位球上のLoewner chainがk-fold symmetricalであるための必要十分条件を与えた。その応用として、正規化された局所両正則写像が、α型の螺旋型写像でかつk-fold symmetricalであるための必要十分条件を与えた。α=0のときは、この結果は、Liczberskiによって提示された未解決問題と類似の問題に対する解答を与えている。また、k-fold symmetrical Loewner chainの具体的な例を与えた。 4.多変数の凸subordination chainについて研究した。C^n内のユークリッド単位球上で、凸subordination chainになるための必要十分条件を与え、また、様々な例を与えた。また、凸subordination chainから導き出された函数が単葉になるための十分条件について考察した。 5.複素バナッハ空間の単位球上のある種の有理写像が星形写像になるための必要十分条件を与えた。また、ヒルベルト空間内の単位球上のある種の有理写像が凸写像になるための十分条件を与えた。これらの結果により、無限次元空間の単位球上の星形写像や凸写像のたくさんの例が得られた。
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