研究概要 |
本研究の目的は,任意有限次元微分可能閉多様体上の十分大きなクラスである擬軌道尾行性(以下SPと表す)を持つ写像全体におけるC^r-位相に関する内点に対し,その力学的・微分幾何学的特徴付け(双曲性の証明)を行うことである。そして将来的には,それをもって「C^r-構造安定予想の解決に向けての研究」・「分岐理論の一般論的研究」に寄与してゆくことを目指す。本研究では,SP C^r-開条件(r≧2)から双曲性(すなわち,一様双曲性)を導くために次のような方針を採る。写像がC^2級以上であればPesin理論が応用できる(Pesin理論は(非一様)双曲性を測度論的に取り扱う理論で,現在,エノン写像等の研究に重要な役割を果たしている)。Pesin理論とSP理論(SP C^r-開条件)の融合を図ることにより(一様)双曲性の証明を試みる。形式的には『SP C^r-開条件+Pesin理論⇒双曲性』を示す方向で研究を行う。 具体的には,任意有限次元微分可能閉多様体上のC^r-微分同相写像全体の空間にC^r-位相を導入し,SPをもつ微分同相写像全体の集合をSP^rで表す。今,SP^rのC^r-位相に関する内点集合全体をSP^rで表せば、f∈SP^rの近くの写像もまたSPをもつ。今年度は,研究分担者の協力の下,以下の2点を目標に研究を行った。 (1)r≧2の位相においても写像を摂動する場合Franks補題の考え方はやはり必要である。まず,Franks補題の証明を詳細に検討し,r≧2でどの程度の主張が成り立つのか,どのような条件が整えば,どの程度の大きな摂動を行うことが可能なのか等々,C^r-位相(r≧2)に対し,同補題の主張・証明をよりシャープな形で整理・確認する。 (2)次に,微分可能閉多様体を2次元(閉曲面)に限り,f∈SP^rについて(非遊走集合の)非一様双曲性を証明する。 (1)については十分な検討を行い,いつでも応用可能な状態である。が,(2)については,ほとんど進展はなかった。
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