研究概要 |
本研究では、非可換(量子)確率空間における、新たな変形独立性の概念と、確率空間の変形量子化の可能性に関する調査研究が主な目的である。本研究においては独立性の変形をモーメント・キュムラント関係式の変形を行うのと等価であると考えることが鍵となる。モーメント・キュムラント関係式は、順序集合の分割統計の理論とも関連が深い。最近Dykemaにより自由乗法的合成積の組合せ論的表現においては非交叉絡み有分割が重要な役割をすることが発表された。平成20年度はこの分割統計の変形と自由乗法的合成積の変形との関係を調査研究に着手した。特に、自由Meixner分布族が自由合成積の言葉で特徴付けられることに関連して,非交叉絡み有分割上の分割統計を用いて、自由Meixner分布の高次モーメントが記述されることを導いた。この結果は2008年夏のバナッハ研究所(ポーランド)の研究会で報告を行った。さらに、非交叉とは限らない一般の絡み有分割にも拡張可能であることを発見し、交差数のq-数え上げに着目することにより、通常のMeixner分布族と自由確率論におけるMeixner分布の補間、すなわち変形Meixner分布族の構成が可能であることをq-変形Fock空間上の作用素を具体的に書き下すことにより示した。この結果は、昨年末に仙台での国際研究集会で発表すると共に、数理物理と関連してHeidelberg大(ドイツ)の研究グループと研究討議も行った。これらの発表と研究討議にも補助金を活用したことも合わせて報告しておきたい。現在(報告書作成時)これら一連の研究結果について学術雑誌に投稿すべく成果の取り纏めを行っている。
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