研究課題
基盤研究(C)
超格子構造とは、江崎玲於奈の提唱による異種半導体の薄膜を積層させて製造される人造の構造物で、量子効果を用いた半導体デバイスの一種である。本研究の特徴は、所望の透過特性からポテンシャル形状を決定したいという工学的要請を視野に入れた上で、この超格子構造を数学的対象ととらえて、その特性を数学的に解析することにある。この問題は数学的には一次元のシュレーディンガー方程式の逆散乱問題であり、解を得ることは困難である。工学研究者(浅倉邦彦氏、真田博文氏、鈴木正清氏)の研究協力も受けて、次の成果を得た。1.層厚の変調を受けたポテンシャルならびにデルタ型ポテンシャルによる新しい超格子構造が、従来の変調超格子構造と類似の透過特性を持つことを見い出した。また影像インピーダンスや映像パラメータを用いた真性透過域の推定手法を構成できた。2.変調超格子構造の特質である準透過域の生成の説明が、新しい等価ポテンシャル構造を見い出すことで定性的に可能になった。すなわち、等価ポテンシャルに2重バリア構造が生じて、それによる共鳴現象が準透過域を生成していることが明らかになった。これを用いた定量的な解析は今後の課題である。3.デルタ型ポテンシャルを持つ一次元シュレーディンガー作用素の離散固有値の個数の問題を、下からの評価のみであるが解決できた。上からの評価は今後の課題である。これはデルタ型ポテンシャルによる変調超格子を設定に含む問題である。4.類似の純数学的な問題として、超格子構造を離散化したモデルを考察した。整数全体集合上の離散ラプラシアンのグリーン関数を初等関数の合成として書き下すことに成功し、それを用いて、離散スペクトルの構造の解析が可能になった。また数値計算により、超格子構造と同様な、真性透過域、準透過域、阻止域が生成されることも確認された。
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ページ: 932-935
Proceedings of 7th International Symposium on Communication and Information Technologies 2007, ISCIT 2007
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Proceedings of International Symposium on Intelligent Signal Processing and Communica-tion Systems, ISPACS 2006