研究概要 |
南部は,(1)安定化された放物系において,解に従属する汎関数が,解より厳密に速く減衰する特別な制御則を構成した.拘束条件つきの極再配置理論を確立し,その必要十分条件を可観測性により記述した.これは,40年前のW. M. Wonhamの極再配置理論以来の本質的拡張となる.(2)第1,3種境界条件が連続的に混在する放物形境界制御系において,作用素の分数ベキを経由する従来の解析的方法の限界を明らかにし,新しい代数的方法による安定化を達成した.安定化補償器の設計に際し,より単純な代数的方法をL^2-理論の枠内で確立した.(3)Static feedback機構での安定化において,観測器,制御器がともにspilloverをもつ場合,可観測性の仮定の下で,安定性向上を達成した.有限時限部分構造の次元の増加にしたがい不安定spectrum間の内部特異性が強くなることに注目し,次元が5以下の場合に,内部特異性の除去に成功した. 中桐は,(1)強い粘性をもつ膜方程式に対する最適制御の必要条件を様々な終端条件のもとで求め,解の制御変数に関するGateaux微分可能性を考察した.(2)メモリー項を有する粘弾性方程式を変分法の視点から考察し,弱解,強解の存在と一意性を示した。(3)神経回路網方程式の解に対する数値解析的近似の研究を行った. 内藤は,(1)特異外力項をもつ楕円型偏微分方程式の全域解の存在・非存在及び多重存在について考察を行った.(2)Sobolev臨界指数増大度の非線形項をもつ半線形放物型偏微分の解の爆発について,type IIといわれる特異な速さの爆発解の存在を示した.(3)楕円型理論における比較定理及び変分的手法により,半線形熱方程式の解の存在を示した. 田畑は,(1)有界領域における人口移動の経済現象を記述する非線形積分-偏微分方程式で現れる形式的Kramers-Moyal展開の厳密な意味づけを,関数解析学的手法により行った.(2)人口移動の生物学的拡散が動物等の移動に類似することを,半線形積分-偏微分方程式により数理モデル化して比較した.(3)DS/CDMA通信システムにおけるキャパシティ問題を,統計的手法により考察し,counting methodの統計学的優位性を示した.
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