研究概要 |
本研究課題の最終年度となる本年度は昨年度に引き続き、主として常微分方程式論的手法を中心として非線形常微分方程式の固有値問題の固有値や固有関数の漸近挙動に関する詳細な解析を継続して行った。特に1次元のロジスティック方程式や単振り子の方程式など、生物学的背景や物理学的背景を持つ方程式に対して詳細な漸近解析を継続して解析すること、また逆問題の視点からの分岐曲線の解析に研究の焦点を絞った。その結果、以下のような結果を得ることに成功した。 1.ロジスティック方程式のような、生物学的背景を持っ方程式に関しては、これまでの研究成果を踏まえた上で、引き続き1つのパラメーターを含む固有値問題に関し、解の漸近挙動の考察を中心に研究を行った。具体的には、非線形項がpべきのときで、特にp=2,5の場合を考察した。パラメーターが非常に大きいとき、楕円積分の漸近公式をたくみに利用することにより、様々なノルムに関する詳細な漸近解析、漸近展開の公式を確立した。ここで得られた結果で強調したいのは、主要項としてpべきの非線形項をもつものに対して、特殊なpの値のときは楕円積分を利用することにより詳しい漸近展開公式が得られることを発見したことである。 2.上記1で確立した分岐曲線に関する詳細な漸近展開公式の確立により、昨年度から取り組んでいる逆問題的考察、すなわち非線形方程式の分岐曲線から、その方程式に含まれる非線形項をどのような精度で特定できるか、また一意性は成り立つかという基本的な課題を考察し、一意性に関しては、非線形項が解析的であれば分岐曲線は一意的に定まるという、基本的な結果を得ることができた。
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