本年度は昨年度に続きL^2空間でCoriolis力を伴った3次元定常Navier-Stokes方程式の解析を行った。Navier-Stokes方程式では、コリオリカの項はエネルギーに対し何ら影響を及ぼさない。しかしCoriolis力を限りなく大きくすると流れは2次元的な流れに漸近する(昨年度の解析)。これはCoriolis力がエネルギーレベルで流れに影響を与えていないことの表れである。 そこで本年度は、半空間で線形化定常Navier-Stokes方程式を取り扱い解析した。具体的には方程式を境界に垂直な速度、垂直な渦度及び圧力を未知とする変換を行い、境界方向のFourier変換の施した方程式を考え1階常微分方程式系(6未知関数、6方程式)で解析を行った。この方程式の安定性を支配する固有値を解析するとCoriolis力がゼロか否かで決定的な違いが現れることを見いだした。即ちCoriolis力がゼロ(線形Stokes方程式)では固有値は正負各一つの計2つだけ存在するが、Coriolis力があると固有値は正負3個の計6個現れる事が分かった。Coriolis力を限りなく大きくしてもその状況は変わらないことも解析できた。これはCoriolis力は微小な摂動であっても方程式の解の構造に深く関わり合っていることの表れである。ここ数年Coriolis力を伴うNaviel-Stokes方程式では、Coriolis力が主要項の一つであるとの感想を得ていたが、今年度の研究においてそれを証明できたと言って良いと思う。 今年度の解析をまとめると、Navier-Stokes方程式では、非主要項と見えるCoriolis力は、主要項であるという明確な認識を得たということであろう。
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