研究概要 |
岡の研究は,大別して以下の3つである. 1.Conley指数等の位相的方法を計算機による計算と組み合わせることで,力学系の大域的構造を位相的に捉え,それを通してカオスを含む力学系の大域的振る舞いを研究した.詳しくは,slow dynamicsが高次元の場合の特異摂動系におけるcennecting orbitの存在をConley指数を用いて示す理論を構築し,それの応用としてGardner-Smollerによって研究されたある種の反応拡散系の進行波解において,2種類の周期進行波解や、それを任意の順序でつなぎ合わせたような波形を持つ無限個の進行波解の存在を証明した.また,3月にはワークショップ「Topological and Computational Approaches to Dynamical Systems and Applications」を開催し,この方向の研究の成果について意見交換した.特に,Mischaikow教授らGeorgia Institute of technologyの何人かの数学者によって開発されたコンピュータソフトCHompを使いLeslie modelの孤立不変集合の間の勾配的結合の構造の位相的記述と分岐構造を調べる研究を始めている. 2.相空間の有限分割による記号化を用いたカオス力学系への計算的アプローチとして,1次元写像に近いHenon写像のtrellisと1次元写像のkneading列との関係を調べている. 3.2次関数族のカオス的振る舞いに対するパラメータ集合の測度の計算的方法による評価の研究は,その評価に用いるいくちかのパラメータの間の不等式関係からそれらの満たす領域を計算的に求め,更にcritical pointの外の双極性を示すための実験的計算を始めた. 国府は,Michelson系と呼ばれる3次元の多項式ベクトル場の1パラメータ族に見られるヘテロクリニック軌道の無限回の分岐の集積現象を調べ、その組織中心を分岐理論的に明らかにした.またその機構が実際にMichelson系において起きることを精度保証付き計算と位相的議論を用いて数学的に厳密に証明した. 石井は,引き続き複素エノン写像の研究を行った.特に一次元理論におけるHubbard treeの類似物を構成した. 荒井,は力学系の一様双曲性証明アルゴリズムを複素ヘノン写像に応用し、モノドロミー群が無限群になることや、モノドロミー表現と実ヘノン写像の関係などの新しい結果を得た.
|