研究概要 |
1.多相流体現象モデル方程式の数学解析:昨年度に引き続いて,空間1次元の等温流体の運動方程式において,初期状態が温度の異なる多数の相を持つ場合の初期値問題を研究し,昨年度の結果(平成18年度研究実績報告書)のなかの,大域解が存在する条件に関する,温度の変化量と初期値の変動量の積についての上限を評価した(D.Amadori, A.Corli両氏との共同研究).この評価により,大域解の存在条件を簡明にすることができた. 2.2x2保存則系において,Liu-01einik条件をみたすが,粘性衝撃波解の存在しない例:臍点をもたない保存則系においては,Liu-01einik条件を満たす衝撃波は粘性衝撃波により接続されることが期待される.今年度の研究で,臍点をもつ保存則系においては,これが必ずしも成立しないことを示した.臍点を持つ2次の流東においては,medianといわれる臍点をとおる3つの直線が存在する.1つの状態をmedian上にとると,その状態から発するHugoniot曲線は臍点の向こう側で,同じmedianと交わる.その点の近傍においてHugoniot曲線上の状態を適当に選ぶと,Liu-01einik条件をみたすが,粘性衝撃波が存在しない例が構成される.この現象は,median上には,不足圧縮(undercompressive)な粘性衝撃波解が存在することと,Hugoniot曲線が臍点の向こう側で交わる点は2次分岐点であることが原因となっている.また,一昨年度の研究により,最初の状態が,median上にないときは,臍点をもたない場合と同様であることが分かっているので,median上の状態は,力学系としての構造不安定性を引き起こすことも示している.
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