研究概要 |
多相流体現象モデル方程式の数学解析:平成18,19年度に引き続いて,空間1次元の等温流体の運動方程式において,初期状態が温度の異なる多数の相を持つ場合の初期値問題を研究した(D. Amadori, A. Corli両氏との共同研究).本年度は,局所相互作用評価の精密化をおこない,特に生成される希薄波の大きさの評価を得た.昨年度までは,径路分解の方法と世代番号により,衝撃波の大きさを評価し,それを用いて希薄波の大きさを評価していたが,この局所評価により,希薄波についても世代番号を導入し,希薄波の全体量を直接に評価することができた.また,Glimm汎関数に現れる係数の最適形を得ることができた.これらの評価により,従来より自然な条件の下で,大域解の存在を証明することができた. 洪水波モデル方程式の数学解析:平成18年度に引き続いて,傾斜角が一定の水路上の流体の運動方程式について,初期値問題を研究した(K. Trivisa氏との共同研究).方程式は緩和型(relaxation)双曲型平衡則系で,双曲系の部分は気体定数が2の等エントロピーモデル方程式である.フルード数が2より小さいことが,緩和型方程式の理論における劣特性条件と同値である.本年度の研究で,平衡解の近傍では,劣特性条件と強凸なエントロピー関数の存在が同値であることが分かった.これにより,緩和型双曲型方程式の川島理論を,洪水波モデル方程式に適用できることが分かる.
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