1.購入した高速カメラを駆動するためのソフトウェアを開発した。現在、350Hz程度の画像取り込みが実現できている。 2.19素子からなる可変形鏡について干渉計を用いてその特性を調査した。この結果、すべての素子がほぼ同じ特性をもち、電圧に対するピエゾ素子の変形量が線形とみなせることを確認した 3.飛騨天文台の1階ターンテーブル上に装置を設置するように光学系の設計を行い、装置を製作した。 4.「第20回ICO会議」および「第5回工業・医学用補償光学についての国際ワークショップ」において補償光学に関する最新の動向を調査した。 5.5x5のマイクロレンズアレーを用いた波面センサーを開発した。さらに、このセンサーで得られるデータから高速に波面を計算するアルゴリズムの開発を行った。このアルゴリズムは、太陽黒点を特徴パターンとしたとき、その重心ずれを検出するものである。 6.得られた波面データから可変形鏡にかける電圧値を高速に計算する方法を開発した。現状では、波面計算と電圧計算をあわせて1ミリ秒程度での処理が可能である。 7.開発した補償光学装置を京都大学飛騨天文台のドームレス望遠鏡に設置し、太陽観測を実施した。この結果、位置ずれ補正については、2〜3秒角程度の変動を0.5〜1.0秒角に抑えることができた。波面補正については、フレーム間相関値を0.65から0.83まで向上させることができた。 8.今年度の研究総括を行った結果、マイクロレンズアレーと可変形鏡のチャンネル数は当面現状のままで十分であることが判明した。しかしながら、現状の装置では約60Hzまでの変動の補正が可能であることを確認しているが、実際の太陽観測では位置ずれ波面補正とも動作速度がまだ不足していることがわかった。さらに、光学的な性能についてはまだ改善の余地があることもわかった。また、大気のさまざま状態に対する装置の性能の調査が不足しており、さらなる観測が必要である。
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