研究課題
基盤研究(C)
原始星を代表とする若い星の特徴の1つはガス降着が盛んなことである。原始星も多数は連星や多重星の一員であることを考えれば、ガス降着における伴星の役割を考えることは重要であるが、これについての研究は極めて限られてきた。これは連星系でのガスの流れを計算するのが困難だったことが一因である。本課題では入れ子状格子を採用することによりこの問題を回避した。このシミュレーションでは、連星の軌道半径の8倍にまで広がった大きなガス円盤(=周連星円盤)全体と、主星および伴星の周りのガス円盤(=周星円盤)が同時に解けている。周連星円盤には複数対の渦状衝撃波が現れる。渦状衝撃波のうち一対は連星の公転と同じ角速度で回転するが、他のものはそれよりゆっくり回転する。連星の公転と同じ角速度の渦状衝撃波が遅い衝撃波を追い越す際に、連星の重力ポテンシャルの入り口であるL2点付近のガス密度が上がり、主星や伴星へのガス降着率が高くなる。これは周連星ガス円盤の内縁近くで起こる現象であるが、より半径の大きいところでも渦状衝撃波同士の追い抜きが起きていることが確認された。回転角速度が公転速度の整数分の1に近いので、衝撃波は連星の公転との共鳴により励起されていると推測される。衝撃波同士の追い抜きは角運動量輸送を引き起こすので、周連星円盤は連星と共鳴しながら進化しているという描像が得られた。また高分解能計算により、主星と伴星の中間点にあたるL1点近傍で乱流が発生することが確認された。関連した研究として連星の形成過程についての数値シミュレーションや、多層格子法より解像度の高い領域を柔軟に設定できるAMR法の開発、強い磁気流体衝撃波を扱う手法の開発なども行った。
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Publications of the Astronomical Society of Japan vol.59(in press)
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