我々は、これまで主としてフリエー変換分光(FTS)や赤外線宇宙天文台(ISO)などによる赤外線スペクトルにより、赤色巨星・超巨星の外層構造の研究を行い、これらの星の光球の外には従来から知られている彩層や膨張ガスーダスト層以外に、温度が1000-2000K程度の"暖かい分子層"が存在することを示した。"分子光球"とも言うべきこのような新しい分子層の存在を最終的に検証し、その構造を決定するには、空間干渉計を用いた高空間分解能による観測が望まれていた。最近、ようやく赤外線領域の分子吸収強度が異なるスペクトル領域で干渉計による観測が行われ、分子吸収が強い領域では可視度が減少し空間的な広がりが大きいことが実際に示された。しかし、これらの観測結果の解析にあたっては逆にスペクトル情報を正しく考慮しないため、空間構造が正しく決定されていないことを指摘し、スペクトル情報と併せることにより始めて整合性のある解析が可能であることを示した。実際に、赤色超巨星αOriなどについて赤外線スペクトルのみから求めた結果がほぼ妥当であることを明らかにした。
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