1.褐色矮星 わが国の赤外線天文衛星あかりにより、7個の褐色矮星について良質のスペクトルの観測に成功した。これらのスペクトルを、我々がこれまでに開発したUnified Cloudy Model (UCM)により解析した。その結果、全体的なSEDはほぼ説明されるが、観測されたCO、CO2などの分子線強度はモデルの予測値よりも大きく、化学的非平衡の効果などを考慮したモデルが必要であることが明らかとなった。 2.赤色巨星 23個の赤色巨星について、フリエー変換分光(FTS)による高分解赤外線スペクトルの解析を行った。これらのスペクトルからCO及びOH分子の等価幅を測定し、ミクロ乱流モデルによる定量解析を行った。その結果、これらのスペクトル線は、I)弱い線、II)飽和した線III)非常に強い低励起の線、の3種類により異なる振る舞いをすることが明らかとなった。このうち、ミクロ乱流モデルにより説明できるのは、上記グループIの線のみであり、これらのスペクトル線から炭素、酸素、およびそれらの同位体の化学組成を決定した。これらの結果は、最新の恒星進化モデルの結果によりほぼ良く説明されるが、12C/13C比などについて尚若干の不一致があることが明らかとなった。また、上記グループIIIの線は光球のみの寄与としては説明されず、光球外の"暖かい分子層"によることがすでに知られている。問題は、上記グループIIのスペクトル線の振る舞いを如何に理解するかであり、これらの線はミクロ乱流モデルでは全く説明できず、引きつずき検討を進めている。
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