本研究は塵の上での反応を調べるための実験研究である。今年度以下のことを行った。 1.初期の星雲の塵は星間塵と考えられる。星間では塵は電磁波や高エネルギー粒子により変質を受けると考えられる。このような星間塵のモデル物質をつくるため、天然の結晶性の良いオリビンとパイロキシンを粉末にし、水素プラズマに触れさせて変質させ、試料をつくった(A)。また、水素プラズマガスにより、オリビンやパイロキシンがガス化するので、そのガスを凝縮し固体(B)を合成した。 2.この試料(A)を電子スピン共鳴スペクトル(ESR)やX線光電子分光スペクトル測定(XPS)を行い、試料の表面の不対電子や化学結合状態を調べた。マイクロ波によりつくった水素プラズマ中では、オリビンはパイロキシンより変質を受けやすいことがわかった。 また、XPS分析によりオリビンやパイロキシンの表面付近しか変質を受けないこと、元素によって蒸発し易さが異なることなど、固体表面の変質の状態が解明できた。ESR測定では、パイロキシンに含まれていた鉄イオンの還元によると思われる変化が確認できた。水素に変えてアルゴンを用いたプラズマ中ではこれらのシリケートの変質はほとんど見られなかった。 3.試料(B)では還元されたシリコンを含む凝縮物が生成した。その紫外・可視スペクトル測定や成分分析を行った(2005年日本天文学会秋季年会で報告)。 4.合成した星間塵モデル物質上でガス反応を行わせ、その生成ガスを調べる。そのため本研究費でガス分析計(RGA300)を購入した。この分析計を真空装置に取り付け作動テストを行った。
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