星雲では多くの分子種が発見されているが、いくつかの分子は気相反応によって生成したのではなく、塵表面が関与した触媒反応によって生成したと考えられている。塵が氷に覆われていない物質密度の低い星雲では、星間で変質した塵や星間ガスから新たに生成した塵が反応触媒となっていると考えられる。 水素が電離しているいわゆる水素電離領域では、塵は徐々に変質したり破壊されたりすると考えられている。しかしながら、電離領域外の星間空間では再び塵の生成が起こると思われる。 そこで(1)シリケートを水素プラズマに曝しその変化を調べた。さらに星間空間あるいは星雲で新しく生成する塵を調べるため、(2)水素プラズマとシリケートが反応して生じたガスの中から、新たに固化した物質を調べた。また、(3)炭素質物質に紫外線を照射し、どのように変質するかを調べた。 オリビンとエンスタタイトを比べると、水素プラズマによる変質が大きいのは、オリビンであった。ともに可視光の反射率が下がること、含まれていた鉄イオンが還元されて鉄微粒子が生じることが観察された。赤外吸収スペクトルでは変化が見られず、変化したのはごく表層のみと考えられる。 水素プラズマガスによってシリケートが蒸発し、そのガスから新たに固体が生成した。この固体はシリコン微粒子を含むシリケートであった。純粋なシリケートとは明らかに異なる可視・紫外線吸収スペクトルをもっていた。 合成した炭素質物質(QCC)は、短波長の紫外線で光電子を放出した。172nmのエキシマランプ光を、石英基板上に蒸着したfilmy-QCCに長時間照射したが、赤外線吸収スペクトルには照射前と照射後には変化が見られなかった。filmy-QCCはこの波長の紫外光ではイオン化するものの物質の変化は起こらなかった。
|