研究概要 |
本研究ではまず、中心星からの強い紫外線照射の影響下にある、光蒸発する原始惑星系円盤の構造を調べた。具体的には、円盤鉛直方向-次元定常流の仮定の下、臨界Dタイプの電離波面を境界条件として連続の式及び運動方程式を解き、円盤中の光蒸発流を求めた。ダスト・ガス温度は、それぞれ輻射平衡、加熱・冷却間の釣り合いの式より求めた。その結果、円盤鉛直方向に10^<-2>-10^4cm/sに変化するガスの速度構造が求まった。さらに求めたガス速度を元に、ガス・ダスト間の摩擦力と円盤鉛直方向の重力との釣り合いの式よりダスト速度を導いたところ、円盤半径1-30AUにおいて、0.01-0.1mmサイズのダストは蒸発流と共に上昇することがわかった。次に円盤半径1AUにおいて、赤道面へと沈殿するダスト粒子の合体成長過程を、光蒸発流によるダスト粒子の上昇を考慮して計算した。その結果、円盤表面におけるダスト粒子降下量に依っては、円盤表面付近の単位体積当たりの全ダスト表面積は大きく変化した。即ち、光蒸発流によるダスト粒子の上昇が観測量へ影響を及ぼす可能性が示唆された。 本研究ではまた、ガス冷却・加熱間の局所熱平衡及び円盤鉛直方向の旅水圧平衡の仮定の下、円盤内ガスの温度・密度分布を求めた。中心星のX線・紫外線放射としては、古典的Tタウリ型星TW Hyaの観測値を再現するモデルを採用した。ダストモデルとしては、(A)サイズ分布n(a)がa~<-3.>5に比例し、最大半径aがa_=10mm,1mm,10cmのモデル、及び(B)合体成長方程式を解き、層流・乱流円盤中でのダスト成長・沈殿過程を扱ったモデルを用いた。計算の結果、円盤半径数10AU以内の円盤表層部では、ガスの主な加熱源はX線による水素の電離に起因する加熱であった。一方で、円盤中層部及び外縁部では、主な加熱源は紫外線に起因するダストの光電加熱となった。これは、紫外線での散乱光は強いのに対し、数keV以下のX線では散乱が小さい為である。 以上、惑星形成の前段階の原始惑星系円盤の構造や特徴を明らかにした。
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