研究の目的の一つである銀河系の化学進化に関して、金属度-4.4dexから+0.5dexにわたる恒星の亜鉛組成の化学進化について、我々の岡山天体物理観測所(OAO)の観測データと過去の文献データの合計約440星ほどを基にして調べ、論文化した。亜鉛は銀河系極初期では鉄に対して過剰に形成される振る舞いを金属度-2まで示し、極超新星で主に形成されることが判明した。また、金属度-2から+0.5までの間の振る舞いは、通常の超新星のモデルに基づく化学進化モデルで説明されることが判明した。特に、このうち、金属度-1前後で亜鉛がより超過を示すことが本研究で初めて明らかにされ、この超過は、超新星II型とIa型による亜鉛と鉄の化学進化モデルで説明されるが、Ia型超新星モデルとしては、主系列あるいは赤色巨星と1個の白色矮星の連星モデルが最適であることが判明した。 別の目的の一つである、惑星を持つ恒星のα元素と鉄族元素の組成解析については、当該年度にOAOにて約30星の分光観測を行い、現在解析中である。また、これまでα元素と鉄族元素を解析した恒星について、新たにLiの組成解析を行った。この結果は、日本天文学会春季年会(2009年3月)で発表された。主な結論として、有効温度5700-5900Kの領域の惑星を持つ恒星のLi分布は惑星を持たない恒星の場合より低いこと、Li組成は5850Kを境に1桁のジャンプを示すこと、さらに、このジャンプは星の自転速度分布のジャンプと一致していること、などが判明した。これらの結果は、今後さらに他の物理量とも関係させて、Liの振る舞いの原因を解明することに貢献させる。
|