本研究の目的は市販の光学機器だけを用いて安価に太陽の彩層の速度場を観測する望遠鏡を製作し、それを太陽プロミネンスの振動・波動現象の研究に利用することにある。そこで、本年度はまず太陽彩層速度場観測望遠鏡の製作を行った。そして、本望遠鏡の製作については第19回天文教育研究会、京都大学飛騨天文台DSTユーザーズミーティング、第11回天体分光研究会で発表した。 本望遠鏡は口径8cm、焦点距離91cmのアクロマート式屈折望遠鏡の後ろに(4倍の延長光学系を取り付けて合成焦点距離を364cmとし)ファブリペロ型干渉フィルタと冷却CCDカメラを取り付けたもの3本を同一赤道儀に同架したものから構成される。そして、本望遠鏡のファブリペロフィルタは半値幅0.3ÅのHαフィルタとした。ファブリペロフィルタは温度を変えることにより透過波長帯をずらすことができるので、3本の望遠鏡の設定温度を変えることによりHα線(水素原子が出す輝線)の線中心、短波長側ウィング、長波長側ウイングの光の強度を観測し、Hα線のドップラーシフトの2次元情報を得ることができ、速度分布の2次元分布図を作ることができる。このとき、太陽のHα線の等価幅は約4Åであるため、本Hαフィルタの半値幅は十分狭く、十分な精度でHα線のドップラーシフトが測定可能である。ところで、精密な測定のためにはHαフィルタの分光特性の検定を行う必要があるが、これについては平成18年前半に度国立天文台の機器で行うことになった。したがって、平成18年度後半にはプロミネンスの振動・波動現象の研究に着手したい。
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