研究課題
本研究は、明るい星の周りの淡い光芒を捕えるため恒星コロナグラフを開発し、赤色巨星の星周ダストによる微弱な散乱光を光学域で捕らえ、星周ダストシェル分布を知ることで質量放出現象の時間変動性と方向性を探求しようとするものである。特に、中心星が光学域で明瞭に観察される明るい赤色巨星を系統的に探査し、10^<-7>太陽質量/年以上の質量放出で作られた星周ダストシェルを、中心星から0.1pc(3x10^<17>cm)を超える範囲にわたり二次元画像として検出することを新たに目指す。前年度までにコロナグラフ光学系と機械系の製作、制御系の詳細設計まで完了した。今年度はモーター駆動部を含む制御系を製作し、また、フィルター類を実装した。さらに富山市天文台所有の液体窒素冷却式CCDカメラを組み込み、高感度画像データの取得を可能とした。これらによりコロナグラフはシステム単体として完成した。この観測システムを北海道足寄郡陸別町にあるりくべつ宇宙地球科学館の115cm望遠鏡ナスミス焦点に搭載し、赤色巨星ダストシェルの高感度撮像観測を試験的に開始するに至った。試験観測においては、既存設備を用いて前年度までに星周ダストシェルを検出していた天体、うみへび座U星を中心に観測した。コロナグラフにより中心星の明るい光を遮ると、それを起源とする強いゴースト像ならびにCCD内で起こる散乱光現象が低く抑えられることを確認した。定量的な評価はこれからだが、既存設備に比べ、中心星のより近くまでより高いS/Nでダストシェルの淡い放射成分を検出できると期待される。特にRバンドの何ら画像処理していない生の300秒積分画像上で、うみへび座U星の星周ダストシェル像を検出できたことは、Rバンド観測がVバンドに比べても有望であることを示す。これにより、Rバンドで高感度の星周ダストシェル探査が可能であることが明らかになった。
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ASP Conference Series 378
ページ: 305-306
AIP Conference Proceedings 948
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