研究概要 |
本研究は,東北大学大学院理学研究科附属原子核理学研究施設(核理研)1.2GeVストレッチャー・ブースター・リング(STB) GeVγビームラインの標識付きGeVγビームによるπ・η中性中間子光生成反応により,原子核内S_11(1535)核子共鳴の性質変化を研究することを目的とし,研究に必要な低温標的の開発,ビーム実験をおこなうものである.本研究を開始し実験に使用する低温標的の設計に着手したが,並行して関連実験の解析をすすめて行くにつれ,原子核内部でのS_11(1535)等の核子共鳴状態の性質を詳細に議論するためには,素過程である水素,重水素を標的とした反応断面積を,その当時知られているよりも詳細に測定する事が重要である事が明らかになった.そのため,平成17年度より新しい検出器群(FOREST検出器)の建設,検出器の要請にあわせた低温標的の再設計,変更,開発などを行ってきた.FOREST検出器は,ほぼ全立体角を覆う3種類の電磁カロリーメータの複合体で,ビーム軸に対して回転対称性を持つ.また,不感領域を減らすため,カロリーメータ開口部から標的を設置する領域は約1メートルの距離がある.そのため,実験に使用する低温標的はビーム軸に対し回転対称性を持ち,低温を保つ冷凍機から標的まで1m以上の距離が必要である.そのうえ,空間的な制約により,冷凍機と標的の間の熱交換を流体の対流を利用せずに金属の熱伝導だけで行うという他に余り例を見ない構造となる.条件を満たす標的を完成するため,まず始めに実機の1/2大の試験機を作製した上で,実機を製作した.水素,重水素を標的とした実験は平成19年度後期より開始している.
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