私は昨年度の研究で摂動QCDポテンシャルとlattice計算によるポテンシャルの結果との比較から強い相互作用の結合定数α_s(M_z)を精度良く決まることを示した。その結果に基づき、今年度私は、摂動QCDポテンシャルの3ループの計算を実行している。この計算が完成すれば、α_s(M_z)の決定精度が上がるだけでなく、ボトムクォークの質量m_bの洗定の精度も上げることができる。この計算では、まず(GRACEの自動ダイアグラム生成プログラムにより)ファインマンルールに基づいて約2万個のダイアグラムを生成した。現代の標準的な摂動計算手法では、漸化式の方法を用いて、数多くのダイアグラムを少数のマスター積分に帰着させる。私は、Laportaアルゴリズムに基づく独自のプログラムを開発することによって、約2万個のダイアグラムを29個のマスター積分に帰着させることに成功した。私はこの計算を(科研費で購入した)ノート型パソコンで実現したが、現代の標準的な摂動計算の基準と比較すると、相当に効率的に計算を実行することができたと考えられる。3ループ計算を完成させるたあには、更にマスター積分を評価する必要があるが、現在、Mdllin-Barnes変換を用いてこれを解析的に計算するための自動計算プログラムを開発中である。計算の総量が膨大であるために、全体で1年以上の計算時間を必要とすると推定される。 また私は、宇宙初期のニュートリノ対消滅に対するQCD補正を計算した。この過程ではトップクォークの共鳴状態が大きく寄与するので、私が開発したクォーコニウム系の精密計算の方法が重要な役割を果たした。
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