放射性炭素年代と実年代の関係を示す較正曲線は約5万年まで伸ばされているが、データセットとしてはC14年代で21500年までであり、それより過去についてはほとんどデータがない。このため、山形県上山市の須川から出土した年輪試料を使って連続する26年輪の単年輪測定を集中的に行った。年輪試料はセルロース処理ののちグラファイト試料として東大タンデム加速器により加速器質量分析法(AMS)によりC14年代測定を行った。グラファイト試料は各単年輪に対して2個作成し合計60試料について測定した。C14年代測定の統計誤差は約80年であり平均C14年代は重み付平均で22283±12年であった。26年輪の各2個のグラファイトの差は4年輪を除いて統計誤差の範囲内で同様な年代を示した。FairbanksO107の較正曲線からこのC14年代は、実年代26792±117年に計算されデータセットが未知の部分に相当していることが分かった。 60個のデータセットの分布をガウス分布で適合させると標準偏差1σが127±23年と測定の統計誤差より大きな値を示した。C14濃度変動について年輪順に対するC14年代の変動を3点移動平均により調べた。移動平均曲線は約12年の幅の二つの山があり、それぞれ比較的シャープな山となだらかな山であった。シャープな山の振幅は約80年であり、10‰の変動となり通常の太陽活動による宇宙線強度変動に比べかなり大きい。約26000年前のC14濃度は現在より約40%も高かったことが分かっているが、太陽活動の寄与がどの程度であるかは未知である。本研究成果は、約2600年前の宇宙線22年変動パターンと太陽圏構造の考察の糸口を示している。
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