本研究計画では、衝撃波による宇宙線加速過程の研究にかかわる重要なポイントとして、大振幅アルフェン波の効果、星間塵フラックス推定、非線形効果の観測例蓄積を企画していた。平成17年度の研究により、これら三項目それぞれについて得られた成果は次の通りである: 1.非線形衝撃波加速過程で重要となる大振幅アルフェン波の挙動について、ホールMHDモデル、およびDerivative Nonlinear Schroedinger方程式を用いたシミュレーションを行った。その結果、顕著な位相コヒーレンスが観測されたが、これは従来の乱雑位相近似による粒子・波動相互作用の描像の見直しを迫るものである。 2.宇宙線組成異常の原因として考えられる宇宙線加速機構程への塵粒子注入過程の見積には、星間塵フラックスの確かな推定が不可欠である。現在のその推定値の根拠の1つとなっているAMORレーダ観測の精度を検証するため、京大MUレーダーを用いたAMORと同じ観測原理によるテスト観測データを入手・処理し、誤差評価についての定量的結果を得た。 3.惑星間空間衝撃波のモニタ観測を続行し、2005年9月7日のX17太陽フレアに伴って放出された惑星間空間衝撃波において、電子のフェルミ加速、非線形効果の発現についての証拠を得た。これは惑星間空間衝撃波における非線形効果の確認としては3例目のものとなり、非線形効果の衝撃波パラメタ依存性の探求に寄与するものと期待される。(この研究申請時に得られていた2例の非線形効果発現例については、平成17年度の間に結果の最終検討と論文印刷準備作業を終えた。)
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