研究概要 |
本研究の主要テーマのひとつであるATLAS muon trigger検出器を構成するThin Gap Chamber (TGC)の耐放射線特性の研究では、引き続いて中性子線を用いた基本特性の研究や、動作条件への依存性などの研究をおこなった。特に興味深いのは、中性子によって稀に起こる高いイオン化に起因する放電の可能性や、長期的な劣化、検出器寿命への影響である。これまでの研究により、これらの心配された効果は実験に大きな影響を与えない程度でありそうであることがわかってきた。また、同時期にLHCやATLASの専門家により高いビーム強度に対応する放射線シールドの検討が行われており、これらの対策をした結果、放射線のレベルがどの程度になりそうかが分かってきた。これによると、前後方muon検出器のうちビームから遠い部分はおそらく今のままの検出器で対応できそうだと予想される。しかし、ビームに近い部分ではバックグラウンド粒子数の増加により検出器の性能が大きく低下する可能性がある。これに対応するために、muon検出器システムのうちビームに近い部分を新しい検出器で置き換える、あるいは、新しい検出器を付加する可能性の検討を始めた。また、これらの新しい検出器開発に重要となる新しい放射線照射施設をCERNに建設することを提案する提案書の作成に参加した(川本)。これまでの研究の成果は、いくつかの会議やワークショップで発表し、議論をおこなった。例えば: ・'Study of neutron impact on TGCs', A. Ochi (研究協力者) ATLAS Upgrade Workshop,1-2,October 2006,CERN http://indico.cem.ch/conferenceDisplaypy?confId=a063024 ・'Muon Detector Upgrade Workshop' T.Kawamoto co-chair http://indico.cern.ch/conferenceDisplaypy?confId=11539 ・R&D Letter of intent (to ATLAS) 'R&D on optimizing a detector based on TGC technology to provide muon tracking and trigger at SLHC' 物理の検討では、継続して、当初のLHCでのHiggs探索や超対称性粒子の探索、それらの性質の研究の方法をMonte Carlo simulationに基づいておこなっている。これらは超高ルミノシティーでの物理の検討の重要な基礎となる。これらの成果は日本物理学会やATLASの会議、ワークショップなどで適宜、発表、議論をおこなっている。
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