研究概要 |
本研究の主要テーマである、ATLAS muon trigger検出器を構成するThin Gap Chamber(TGC)の耐放射線性能の研究では、加速器から得られるMeV領域の中性子線を用いて基本特性の調査を行った。特に、希に起こる高いイオン化に伴う大きい信号の効果や、長期にわたる劣化の可能性について、ガスの種類や動作条件への依存性を含めて数々の知見を得た。一方、これと並行して、エレクトロニクスに対する検討も行った。LHCルミノシティー増強シナリオでは、ビームの衝突間隔を現行のものより短くする選択が検討されている。これに伴い、現行のエレクトロニクスでは色々な問題が出てくるので、対策の可能性を、エレクトロニクス専門家などと共同して検討した。 これらの研究の成果はいくつかの会議やワークショップにおいて発表し議論をした。例えば、 ・‘Workshop on ‘Muon system for LHC luminosity upgrade',T.Kawamoto(co-chair) 2005年11月 ・‘単色中性子を用いたTGCの加速劣化試験',日本物理学会 2005年9月(田中など) ・‘Workshop on ATLAS upgrades for High Luminosity',2005年2月 CERN ・‘Study of neutron impact on TGCs',A.Ochi(研究協力者),ATLAS Upgrade Workshop,2006年11月 CERN ・‘Muon Detector Upgrade Workshop' T.Kawamoto co-chair 2007年1月 CERN 物理の検討では、まず当初のLHCにおけるHiggs探索の様々な可能性をMonte Carloシミュレーションを用いて検討した。これらから得られる知見は超高ルミノシティーでの物理の検討の重要な基礎となる。これらの成果は日本物理学会やATLASの会議、ワークショップなどで適宜、発表、議論をおこなっている。例えば、 ・‘LHCにおけるHiggsの探索'日本物理学会 2005年9月(浅井、小林、など) これまでの研究により、前後方muon検出器のうちビームから遠い部分はおそらく現在の検出器で対応できそうである。しかし、ビームに近い部分では粒子数の増加により検出器の性能が大きく低下する可能性がある。これに対応するために、ビームに近い部分を新しい検出器で置き換える可能性の検討を始めた。また、新しい検出器開発に重要となる放射線照射施設をCERNに建設することを提案する提案書の作成に貢献した。
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