本年度は、さまざまのソリトンを場の理論を用いて研究した。特に余剰次元模型への応用を念頭において、8個の超対称性を持つゲージ理論を中心として研究した。また、ソリトンの性質に触発されて、超対称性を持つ余剰次元模型のさまざまな性質を考察した。 我々の4次元時空がより高次元の時空の壁状の部分空間(ブレーン)であるとする余剰次元模型の考え方は、ドメーン・ウォールのようなソリトンを模型の構成要素として必要とする。このようなソリトンの性質を詳しく調べることが余剰次元模型の基礎を築くことになる。一方で、ソリトンは超弦理論でも場の量子論でも、非摂動論的効果の解明に中心的な役割を果たしている。非摂動論的効果のために、また、余剰次元模型での有効場理論構築のためにも、特に、ソリトン解の持ちえるパラメター、すなわちモジュライを知ることが重要である。我々は超対称な非アーベルゲージ理論を用いて、ドメーン・ウォールだけでなく、さまざまのソリトン解の構成に成功した。我々はU(N)ゲージ理論を採用したので、ドメーン・ウォールのモジュライ空間は全体として複素グラスマン多様体となることがわかった。また、弦理論からヒントを得て予想されていた渦糸のモジュライ空間も、場の理論から正確に導くことに成功した。 この超対称U(N)ゲージ理論では、一般にヒッグス場が真空期待値を持ち、系はヒッグス相となる。このヒッグス相では、磁気単極子やインスタントンは磁束の源となるため、単体では存在できず、磁束の渦糸を伴う。これらは超対称性を1/4保存する複合ソリトンとなる。このような複合ソリトンについても、解が持つモジュライをすべて数え上げる枠組みを作った。一方、平行でないドメーン・ウォールが共存すると、ジャンクションが生まれる。これはウェッブともいうべき複雑なパターン構造をもたらし、超対称性を1/4保存する。こうした系のモジュライも明確にした。
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