研究概要 |
本課題は,液体キセノンの屈折率を誤差0.01以下という実用上十分な精度で決定することを目的とし,今年度は次の研究を行なった。 1.前年度の実験における液体キセノンの状態の決定精度の確認 前年度の実験では,気相とほぼ平衡状態だった液体キセノンの白金抵抗体による実測値は,圧力の実測値から蒸気圧曲線に基づいて推定される温度よりも1K高い温度を示した。この原因として外部からの輻射による温度上昇を考えたが,数値計算の結果否定された。さらに,輻射のシールドの有無で温度を比較する実験を行ない,温度に差が出ないことを確かめた。したがって,この温度差の問題は基本的かつ重要な課題として未解決のまま残った。 2.他グループの実験結果との比較 液体キセノンの真空紫外域の屈折率について我々が得た値は,他グループの実験で報告された値とは有意に異なった。分析の結果,これが当該の実験の手法に問題があることが明らかになった。なお,最近にSubtilによる報告が見つかったが,本研究の結果と辻褄が合うか慎重に検討中である。 3.真空紫外光の測定技術の開発 真空紫外域における屈折率の測定で必須な真空紫外光の測定に関し,真空紫外光を可視光に変換するサリチル酸ナトリウムを蛍光被膜に加工する技術を超音波霧化器を用いて開発した。さらに,実際に蛍光板を製作しキセノンエキシマランプの発光スペクトルの測定に用いて性能を確かめた。 本研究で得られた以上の成果は,平成18年度の低温工学・超電導学会,応用物理学会,日本物理学会,および早稲田大学主催のシンポジウムで報告するとともに,指導した大学院生と卒研生により,大学院の修士論文と学部の卒業論文として発表した。また,我々の得た屈折率の値は2006年に出版された国際的な書籍「Noble Gas Detectors」で速報値として引用された。
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