研究概要 |
この研究の目的は低温核偏極で原子核スピンを偏極させて,偏極核からのα、β線の角分布の測定実験を行い,原子核の変形によるクーロンポテンシャルの影響を測定するものである。本年度は2年度である。新潟大の^3He/^4He希釈冷凍機の底の部分の改造では,実際のSi検出器から外部のプリアンプのリード線を繋ぐハーメチックシールの設置を行った。ハーメチックシールは極低温にも使えるものとしてSUHNER社のものを用いた。Si検出器は浜松ホトニックス製のSi-PINダイオード以外に,キャンベラ製のPIPS検出器のテストを行い,^<24l>Amの5.486-MeVのα線を測定した。線源が古いせいで線幅が1MeVほどであったが,波形のS/N比から分解能は25-keV程度であることを確認した。Si検出器の時間分解能を見るため,^<24l>Amのα線崩壊先の^<237>Npの60-keV準位の半減期の測定を,このSiとNaI検出器を用いて行い,αγ(t)の同時係数法でT_<1/2>=67.8±3.4nsを得た。線源の強度が強くS/Nが悪かったが,この値はこれまでの報告されているものと良い一致をみた。1MBqの^<241>Amの塩酸溶液を購入した。これを用いて,電着で新しい線源を作る予定である。さらに鉄箔に^<241>Amを電着させ,温度で拡散させて低温核偏極用の試料を製作する予定である。^<241>Amの塩酸溶液にはキャリアーとしてEuが入っているが,これは拡散速度の違いで希薄にさせることが出来るか,あるいはイオン交換でキャリアフリーにするか検討中である。また,通常の鉄では^<58>Feのabundanceは0.28%であるが,これを92%に濃縮したものを購入,これを用いて鉄中及びニッケル中の^<59>Fe低温核偏極の実験を行う予定である。
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