本研究プロジェクトの目標は、ニュートリノ質量行列のフレーバー構造を明らかにし、その起源を解明することである。この一年間でニュートリノ振動実験の精度はこれまで以上にあがり、ニュートリノのフレーバー混合がTri-bimaximal mixingという特殊な混合パターンを示すことが明らかになった。この事実は、フレーバーについての対称性が存在し、それが質量行列の要素間の関係を与える非可換離散対称性である可能性を示している。そのため以下のような解析をおこない成果を得た。 1 非可換離散対称性である D4 と A4 のフレーバーモデルを構成した。そのモデルにおいてレプトンの質量行列を決定し、ニュートリノのフレーバー混合を再現した、さらに、モデルを超対称性化し、フレーバー混合と超対称性粒子であるスレプトン質量行列の構造の関係を研究した。その結果、フレーバーの変わる中性カレント(FCNC)の大きさが現在の実験制限ぎりぎりにあることが判明した。また、このフレーバーモデルのLHCでの実験的検証可能性を解明した。 2 S4 と Delta(54)の非可換離散対称性についても研究し、フレーバーのTri-bimaximal mixingが実現できることを発見した。さらに、FCNCの大きさを求め、LHCでの実験的検証可能性を明らかにした。S4 と Delta(54)を用いたモデルでTri-bimaximalmixingを実現したのは初めてであり、その重要性は大きい。これらの成果は近日中に論文として出版される。
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