研究概要 |
今年度は,アクシオン模型についての研究を主に行った。素粒子の標準理論のstrong CP問題は,Peccei-Quinn(PQ)対称性を仮定するのが有力な解決法であり,アクシオンの存在が予言される。しかし,問題解決のためにはPQ対称性は極めて正確なものでなくてはならず,そのような大域的対称性は不自然であると考えられる。このPQ対称性の問題に対して,これまでにもいろいろな提案がされてきたが,今回PQ対称性を自発的に破る場に強い湯川相互作用を導入し,大きな異常次元を与えることによりこの問題を解消するような,ダイナミカルなアクシオン模型を新しく考察した。 本研究課題では,これまで標準理論のヒッグスセクターの微調整問題を解決するような機構を探り,大きな異常次元による新しい機構と具体的な現象論的模型の構築を行った。このアクシオン模型の研究も,実は基本的なアイデアは共通しており,その意味でこれまでの研究の拡張になっている。またさらに,SU(5)_1×SU(5)_2という直積群の超対称大統一理論の枠組はアクシオン模型とうまく合うことも分かり,具体的な模型について考察した。これらの結果は現在論文としてまとめているところである。
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