研究概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。 I.U(1)格子カイラルゲージ理論におけるフェルミオン測度の簡潔な評式 現在までのところ、Ginsparg-Wilson関係式にもとづく格子カイラルゲージ理論のゲージ不変な構成法は、可換(U(1))ゲージ群についてのみ知られている(Luscher 1999)。そこでは、局所性、ゲージ不変性、積分可能性の3つの条件を満足するような経路積分測度の存在が構成的に証明される。しかし、数値計算に応用することができる具体的な構成法はまだ確立されていなかった。この課題に対して、我々は、可換(U(1))群カイラルゲージ理論における局所的コホモロジー問題を数値的に解く方法を開発した。さらに、経路積分測度の簡潔な評式を導出し、数値的な応用の可能な定式化をおこなった。 II.2次元格子+2次元連続時空におけるChern指標の構成 Ginsparg-Wilson関係式にもとづくアプローチでは、カイラルアノマリーがトポロジカルな性質をもつ。(格子指数定理Hasenfratz et al.1998)この時、コホモロジー的な分類によってアノマリーの構造を決定することができる。特に、非可換群ゲージ理論の場合は、d次元格子+2次元連続時空上で定義されるトポロジカルな場の、局所的コホモロジー問題を解くことによってゲージアノマリーの厳密相殺を示すことができる(Alvarez-Gaume-Ginsparg 1984,Luscher 1998,1999)。 我々は、2次元格子+2次元連続時空におけるChern指標の具体的な構成をおこなった。このChern指標は2次元格子+2次元連続時空上の局所的な位相場になっており、コホモロジー的に非自明なゲージアノマリーを与えている。この結果は、2次元非可換群ゲージアノマリーの局所コホモロジー問題を解析する方法を確立するための重要なヒントになると期待される。
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