研究概要 |
この研究の目的は非可換群カイラルゲージ理論を格子ゲージ理論の非摂動的な枠組みをもちいて構成的に定義し,その力学的性質を明らかにすることである。Georgi-Glashow SU(5)モデルに代表される非可換群カイラルゲージ理論では,ゲージ対称性の自発的破れが力学的に起る可能性や,複合粒子としてmasslessのカイラルフェルミオンが現れる可能性が指摘されている。これらの可能性は標準模型(the standard model)を越える素粒子の模型を考える上で示唆的であり,興味深い。 格子カイラルゲージ理論の場合,有限格子間隔でゲージ不変性を厳密に保つために,カイラルフェルミオンの生じるゲージアノマリーの厳密相殺を示すことが重要になる。このために,局所的コホモロジー問題と呼ばれる数学的な問題を考察する必要がある。この問題は現在までのところU(1)群の場合には解かれているものの,非可換ゲージ群の場合には,申請者のグループによるSU(2)_LxU(1)_Y電弱理論の結果が知られているだけである。非可換ゲージ群一般の場合のコホモロジー問題を解き,構成的定式化を完成することが本研究の課題である。 1.2次元非可換群カイラルゲージ理論におけるゲージアノマリーの解析を行った.昨年度までの研究で得られた,2+2次元時空(2次元格子+2次元連続時空)上のChern指標の具体的な評式の構造を分析した.しかし,非可換ゲージアノマリーのコホモロジー的分類の手法を確立するには,至っていない. 2.格子上で構成されたWess-Zumino-Witten項を応用して,ゲージアノマリーの相殺しないカイラルゲージ理論の構成的定義を与えた.
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