研究課題
基盤研究(C)
二次元ホール電子系でスピンの集団励起(スキルミオン)が観測されていることに見るように、量子力学的な輸送現象には位相的な励起が現れ、主要な役割を演じることが多い。他方、素粒子論においても、超弦理論の進展の中で様々な次元の位相的な励起を自在に取り扱うようになってきた。このような状況を踏まえて、研究代表者は平成17年から3年度にわたり、超対称理論に現れる多様な位相励起の量子的な特性を研究するとともに、特異な量子ホール効果が観測されている新電子系の物性をゲージ理論の視点から研究した。その内容は以下の通りである。1.研究代表者は以前から超対称理論に現れる(BPS)位相励起について、その量子的な特性を超対称代数の位相荷量子異常を通して考察してきた。平成17年度にはこの研究をまとめ上げる形で、スケール変換と超場形式を組み合わせると、種類や次元の異なる様々な位相励起の量子効果を解析する統一的な枠組が構成できることを示した。2.近年グラフェン(graphene)と呼ばれる炭素系2次元物質に実験・理論両面から強い関心が向けられている。グラフェンは質量ゼロのディラック粒子のように振る舞う電荷坦体をもつ"相対論的"な物性系であり、場の理論の観点からも極めて興味深い。(1)研究代表者はまず場の理論に固有な粒子・反粒子描像や量子異常の観点から、磁場中のグラフェンの電磁応答を考察し、グラフェンが特異な誘電体であることを指摘した。(2)続いて、静的構造因子を吟味して、グラフェンが通常の2次元電子系とは異なる短波長の電子相関をもつこと、そしてこれが"相対論的"な効果であることを指摘した。(3)さらにグラフェンの2層系の電磁応答の考察に進み、2層系には殆ど縮退した特徴的なゼロモード・ランダウ準位が出現すること、そしてこの準位の分離幅が外電場、またはホール電流を用いて制御できるという著しい特性をもつことを指摘した。
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