研究概要 |
前年度に引き続き、ゲージ場とHiggs場を高次元ゲージ理論のなかで統一し、量子効果により対称性を破る機構(細谷メカニズム)を電弱相互作用に適用し、Higgs場の相互作用に関する様々な物理的帰結を導いた。Higgs場はゲージ場の一部になり、Higgs場の相互作用はゲージ原理と時空構造によって決められる。特に、Randall-Sundrum時空上でSO(5)xU(1)モデルを詳細に調べ、このモデルが正しいWeinberg angleを与え、かつ今までの実験結果と矛盾がないことを示した。WWZの相互作用については、Randall-Sundrum時空上では標準模型とほとんど同じ結果になるが、平坦な時空上でのゲージヒッグス統合では、WWZ結合が小さくなってしまい、LEP2の実験結果とすでに矛盾することを示した。この事実は、余剰次元が存在するとすれば、時空が曲がっていることを意味する。さらに、Higgs場(H)のゲージ場(W, Z)との結合定数、フェルミオン揚との結合定数を調べた。WWH, ZZHの結合定数は標準模型にくらべ、cos(theta_H)だけほぼ普遍的に小さくなることを示した。ここで、theta_Hは、細谷メカニズムを特徴づけるYang-Mills AB位相である。WWH, ZZHの結合定数は現在のところ実験的には測定されていないが、今年末に動き出すLHCや、近い将来に計画されているILCにより、測定可能になる。また、フェルミオンとの結合定数(湯川結合定数)については、フェルミオンの質量の起源に任意性があるためモデルの詳細に依存するが、一般に標準模型とくらべて小さくなることを示した。この点も、LHCで検証可能となる。
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